当たり前のように、しょっちゅう英文に登場するこの a と the 。
めちゃくちゃよく見る単語ですが、いまいちこの2つの必要性を感じられずにいました。
This is a pen. 、This is pen. ・・・。
The USA、USA・・・。
a とか the なくても伝わるくない?
これはもう訳す価値もないのでは?
などとそれはぞんざいに扱ってきました。
同じ機能をもった単語が日本語にはない上に、名詞が数えられるかどうかなぞ我々日本人からすると超どうでもいいからしょうがないですよね。
でもこの可算名詞(数えられるもの)、不可算名詞(数えられないもの)を分けるための冠詞( a と the )を軽視すると、おそろしい英文ができあがってしまうのです。
I ate a chicken yesterday.
まずはインクのしみと見紛うほどの最小単語、a からいきます。
英語の学習を始めて少し経った頃に出会った「日本人の英語」(著者:マーク・ピーターセン)という本のチャプター2のタイトルから引用したこの見出しの英文。
結論から言うと、この文、絶対 a を取らないといけません。
まあまずは名詞とはどんなものか改めて思い出しましょう。
当たり前すぎてあれなんですが、名詞とは人とか物とか場所のことですね。
人、猫、水、山、スマホ、ホットケーキ、こんなの全部名詞です。
あと人とか場所の固有名詞とか、あれ、それ、あいつ、彼などの代名詞とかありますけど、ちょっとこいつらは置いときます。
そういうのを除いて冠詞付ける付けないの種類で言うと、名詞には5つの種類があります。(たぶんそれ以上はないはずっ)
① a がついた名詞・・・同じ種類の中のどれでもいい1つ。(数えられる)
② the がついた名詞・・・話し手の間で特定された、たいがいの場合1つ、あるいは特定された全てのもの。(数えないけどまあ数えられる)
③ s とか es がついた名詞・・・どれでもいい1つが2つ以上ある。(数えられる)
④ s とか es をつけずに2つ以上だと表す名詞・・・もうほぼ人関係なのでこれは例外。(people 、children 、men 、feet など)
⑤ 何もついてない名詞・・・数えられないもの。
①~④は可算名詞で数えられるもの、⑤は不可算名詞で数えられないものです。
数えられるか数えられないかの違いはどこかというと、切っても変わらないなら不可算名詞なんだそうです。
水とか料理はわかるけど、なぜかお金は不可算名詞。
半分に切っても銀行で交換してくれるから?
もう英語の文法決めた人の主観じゃね?と思う分け方によく出会います。
ただそれで全世界浸透しちゃってるんで、もう適応するしかないです。
はい!ここで最初の英文に戻ります。
I ate a chicken yesterday.
動物の場合は1匹、2匹と数えられるのが大前提なので、英文の状態としては①~③の状態のどれかです。
① a dog・・・犬が1匹いる、1匹犬を飼っているとか、これを聞いて思い浮かぶ犬種はそれぞれ。とにかく犬という生き物が1匹ねという感じです。
② the dog・・・あーあの犬ね、と会話のなかではっきりイメージができています。マイケルのあのでかい犬、公園で見かけるあのやせた犬とか。theはまさに「あの」って感じです。
③ dogs・・・犬の総称はこれです。また出てきますが、よく言う「犬が好き」は「I like dogs. 」が正解です。
ただ私たち、動物も食べますよね。
まあ豚とかは pig と pork で生きてる方と食べる方と分けて言いますけど、にわとりは両方 chicken です。
どうやって分けるかというと、そう、冠詞があるかどうかです。
なので I ate a chicken. とネイティブが聞いた時、頭に思い浮かぶのは鶏肉を上品にナイフとフォークで食べてる画ではなく、口の周りを血と羽だらけにして丸のにわとりにかぶりついているワイルドな画です。
稀に自給自足かな?と受け入れてもらえるかもしれませんが、基本ドン引きされます。
同じような間違いなんですが、「I like dog.」もおそろしい文です。
もうお分かりだと思いますが、これだと「犬の肉を食べるのが好き♪」となります。
♪つけるとさらにホラーな感じになりますね。
その上さらに犬を飼ってるとかなると非常食かな?となりかねません。
私たちのほとんどはアジア人顔なので、すぐ英語ネイティブじゃねえと相手が分かってくれて、多少ホラーな間違いをしても汲み取ってくれるかとは思います。
ただやはり英語を使いたいと思うなら、彼らが大事にしている感覚を理解して共有することは不可欠かなとも思うのです。
冠詞ではなく名詞こそおまけ!?
私たちジャパニーズからすると主役は名詞という捉え方なんですが、英語では真逆なんです!
おまけは名詞の方なんです・・・!
私はこれを知ったとき、日本語とは根本的に考え方から違うのだなとひっくり返る思いがしました。
あんなに早口でばーっとしゃべって冠詞なんか言い忘れたりしないのかなと期待して一生懸命リスニングしてたのですが、忘れるわけがないんです。
英語ネイティブの人たちは、まず冠詞で意味的なカテゴリーを立ててから名詞を探していたのです。
例えば食べたものとして伝えたいものが、1つの形の決まったものだとするなら「 I ate a ... a ...hotdog! 」(あるいは a sandwich 、a rice ball )と「 a 」をくり返しながら思い出し、決まった形がない材料的なものなら「 I ate ... uh ... uh ... meat! 」(あるいは bread 、rice)と日本語でいう「えーと」とか「あのー」にあたる「 uh 」(日本人からしたら両方「アー」ではあるんですが)とくり返しながら答える感じだそうです。(前述書籍の13ページより引用)
あと名詞も名詞で、冠詞があるなしで全く違うものになるものも結構あるんです。
「 glass 」は a glass なら飲み物を飲むグラスで、 glasses はメガネ、 glass はガラスになります。
「 hamburger 」は a hamburger ならハンバーガーで、 hamburger はハンバーグです。
「office 」は the office だとその建物自体を表し、 office だと会社という意味になります。
なので She left the office (for lunch). だと、彼女は(昼食をとるために)会社を出たになるのですが、ここが office だけだと彼女は退職したということになっちゃいます。
なるほど、この本の著者が「冠詞を名詞につけるなど非現実的」と豪語していましたが、その理由が見えてきましたね。
うっかり淋しい人発言問題
さあ a の重要さがなんとなく分かってきたところで、次はさっき出た the についても触れてみましょう。
the は最初の箇条書き②で、話し手の間で特定された、たいがいの場合1つ、あるいは特定された全てのものとありました。
the がつく名詞というのは、あーあの○○ね!とみんなわかって当たり前のものというのは理解できるにしろ、「特定された全てのもの」とか???なのはもうよくわかります。
いやもう冠詞全体が日本人にとっては「いる?」な機能だと思いますが。
実は the だけではなく、 my 、his 、your などの名詞の前にくる代名詞もそうなんですが、そんなものが名詞の頭についた(何と言われようと日本人はどうしてもこんな感覚になる)場合、例えば my だと、「my friend = 私の唯一の友達」となってしまうのです。
I went to Okinawa with my friend. →私のたった1人の友達と沖縄に行きました。
I went to Okinawa with a friend (of mine). →友達と沖縄に行きました。
These are the dogs helped from the river. →これらはあの川から助けられたあの犬たちです。(助けられた犬全部)
These are dogs helped from the river. →(他にも助けられた犬はいるけど)これらはあの川から助けられた犬たちです。
いや友達も犬もそんなに厳密にせんでも!!
とつっこみたい気持ちは抑えられないものの、シビアに誤解を排除する英語の機能と文化に、あうんの呼吸を美徳とするなあなあ曖昧ごますり文化の日本人の私は尊敬すら覚えます。
とにかく the や my がつく名詞(日本人はどうしても・・以下略)は、その他に同じ仲間がいない、となってしまうのですね。
最初の「あの」の感覚はわかっても、この独占しちゃう感は日本人にとってはかなり手強いです。
あと日本の英語教育業界に 「friend といえば my だろ」が広がっちゃってて、実際英検でも with my friend はお決まりの文句です。
まあ my friend だとちょっとおかしいんだなとだけ覚えておいて、日本を出る際にしっかり訂正するようにしましょう。
日本での英検や試験は my friend で切り抜けましょう。
習うより慣れろ
そしてあとはもう慣れです、とマークさん(前述書籍の著者)も言ってます。
特にリスニングやスピーキングはとにかく練習することが大事です。
国語や算数の学習より、ピアノやサッカーなど、訓練で伸びる分野に似ています。
英文を読む!英語を聞く!
むむ、この the は一体何の用があって cup の前に居座っているのだ!
むむむ、この a の効果とは!?
と彼らにぜひ興味を持ち、名探偵コナンな気分で冠詞が伝えようとしている意図を汲み取ってあげて下さい。
彼らはクレーンゲームの景品のちいかわがごとく、あなたの手に救われ、理解されるのを今か今かと待っています。
と思い込んで、広い心で受け入れてあげましょう。